あらすじ
2023年8月1日。
長きに渡り人々の前で歌い続け、服従させてきた私だが、ついに暇を出された。
そしてそれならばと、各地に存在するという卵たちに出会おうと私はいつもの宿であるPCを飛び出した。
結果として私は、他の卵のちょっとした事情はもちろんのこと、知らなった仲間の過去を知ることができ、その探求心を止められなくなった。
***
[更なる出会い]
私は!?卵に、そろそろ行くよ、と告げた。すると彼はゆっくりと頷くと、元の場所に私を連れて戻り、それから少し別れを惜しむかのような顔の形態で私を見送ってくれた。
そうして私は歩みを進めた。彼のとんでもない真実に興奮冷めやらぬまま…
そのうちに目に入るは、なんの変哲もない扉。私と同じような扉だ。
はてさて、一体全体、そんな卵はいたものかと、私はこれまた好奇心で扉をたたいた。
すると現れるは、なんと自分とほとんど同じ姿を持つ卵。
[ドッペルゲンガー?]
思わず私は腰腰腰が抜け👍、「Hi♪!?」という声を上げてしまった。この卵はドッペルゲンガーで、もうすぐ私は死ぬのか、ウン命 DV やめて…と怯えてしまったからだ。
そんな私に彼は、「矢部、驚かせてしまったかい?」と声をかけてくれた。
「まあ、無理もナイよね…でも安心して欲しいなぁ。僕は君とちょっとだけ違う個体。だから死にやしないよーん、んっん〜♪」
どうやら気さくな卵のようだ。先ほどの言葉に少し安心し、落ち着いた私は、彼の姿を少し観察した。
パッと見は同じだが、よく見ると私と違い常に笑っている。そう思うと、先の発言も少々納得がいく。私は、人々を服従させ続けるためにも、あのようなことはあまり言わないほうだからだ。
部屋を見回しても、私とほぼ同じような部屋だが、ふと大きな「カニのオブジェ」が目に入る。
私はなんとなく彼に、このオブジェはなんなのかと訊いてみた。
彼曰く、これは「笑顔と食物の象徴」で、彼が常に笑顔を保つために大切にしているとのこと。
「人間はカニを食べると自然と笑みが溢れると聞いてから、ずっと飾っているんだなぁ」
私はほほう、と思うと同時に、なぜ人間を恐れさせ、服従させる存在の「卵」が常に笑みを、それも不敵な笑みなどではなく、本当ににっこりと明るい笑顔を振り撒いているのかと疑問も浮かんできた。
「恐怖で服従させるんじゃ真の信心なんてものは得られないと僕は考えてる。少々舐められてもいいから、フレンドリーに行きたいというのが僕の方針なんだなぁ。」
「少々舐められてもいいから、フレンドリーに行きたい」。私はこの言葉を耳にして、この卵とは気が合わないのではないか、そもそも卵に向いているのかとも思ったが、いろんな考えがあるもんだ、過去と未来の狭間はそういう時代だ、と半ば無理やり納得した。
私は失礼ながら、彼は普段の舞台に出てこないようだが、いつもは何をしているのかと訊いた。
すると彼は表情一つ変えず、
「ああ、いつもはとあるサーバーの看板をやっているんだ。」
[行こう!「卵鯖」1]
サーバー?
主の口からよく出る言葉だ。よく覚えていないが、確か機械関係の言葉だったような気がする。
私はそういう方面にはからっきしで、主がそれについて悩んでいる時も適当に聞き流していた。
しかし知る限りでは、「サーバー」に看板などあったか。わからないときは聞くのが筋だと思い、また彼に尋ねた。
「ああ、多分君の思っているのとは違うなぁ。僕の言いたい「サーバー」というのは、Discordのサーバーのこと。」
Discord。
これは聞いたことがあるような…たしか世界中の人間と集まり、何かしらの会話をするSNSのこと…だったか。
「…まあ、見た方が早いと思、ゥ。すぐそこだからついてきて欲しいなぁ。」
彼はおもむろに壁のもう一つの扉を開いた。
するとそこには、一面のダークグレーの、何やら退屈そうな空間が広がっていた。
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